ぱぷ火🐧💚ご飯読書哲学『ぺんぎんロマンス』

霞を食べて生き延びたい『ぺんぎんロマンス』

ニーチェの馬とオレンジの皮――私が愛したオレンジの皮よ今いずこ

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前回触れたニーチェのある逸話とは、表題の「ニーチェの馬」からお察しの方もいらっしゃるかもしれませんが、ニーチェ発狂の発端になったと言われているものです。

1889年の1月3日、トリノに滞在していたニーチェは散歩中、カルロ・アルベルト広場へ出たところ殴られている馬車馬を目に止めて、何を思ったのか?泣き喚きながらその馬の首にしがみついたままその場に倒れ込んで意識を失い、その後目覚めてからは精神が正常に戻ることはなかった、とされています。(出典・史実如何は未確認です)

私はこの話を知った際、自分の中にあったある感情と、それからその時の出来事の記憶を強く呼び起こされたのでした。その時の感情は馬に抱きつき泣き喚いたニーチェのものと同じ性質のものではないかもしれませんが、勝手に親しみを覚えてしまったのです。

私が何を思い出したのかと言うと、オレンジの皮――私の保育所時代に母に連れられて行ったスーパーマーケットの店内、誰かがゴミ箱に入れずに床の上に取り残されていた、試食用のオレンジの皮のことです。オレンジの皮、否それは皮だけになったオレンジの一部、一部のオレンジだった。一つのオレンジの、引いては一つのオレンジの木の。

たまたまそれを見止めた私は、母に「(そのオレンジの皮が)可哀想、可哀想」と何度も呼びかけ、母から「触ると汚いから」と叱られると一段と激しく泣き叫び続けたので、抱きかかえられそのまま帰ったという記憶でした。

当時からそれはおかしいという認識は頭の片隅にあったように思いますが、なぜ暴れてしまったのか自分でも分かりません。ただ、今もこの時のこの感情は全く変わらずに胸の中に蘇ってある――それは、生き物にとっては、それが人間であったとしてもおかしな感情ではないのではないか、と今は思っています。


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